キッスボタン/キッシングボタン

ボタンの一部が隣のボタンと重なるように並べられたボタンのことをいいます。

通常の袖ボタンは、留める役割を担っているため、ボタン同士が重ならないように並べられています。

キッスボタンの「キッス」は、「KISS」が語源といわれています。


手仕事の多いイタリアのサルトリア(仕立て屋)で多く使われる袖ボタンの縫い付け方であり、職人による高い仕立て技術をあわらすものです。ボタン同士がキスしているように見えるため、このように呼ばれています。


キッスボタンは手縫いでないとできないため、そのスーツがハンドメイドであるというアピールポイントとして利用されることも少なくありません。


さり気なく、ハンドメイドであることを見せたい時には、キッスボタン仕様がぴったりです。


キッスボタンの起源

袖ボタン自体の起源は諸説ありますが、一説には軍服の仕様に起源あるという説があります。


ナポレオンが、極寒の地で軍服の袖口で鼻水を拭ってしまう兵士たちに対し、鼻水を拭えなくするために金属ボタンを袖口に付けるようにしたのが起源だと言われています。


それ以降、スーツにボタンとしての機能がない、袖飾りとしてのボタンが、そのまま引き継がれたというわけです。


当初は、袖が開閉できる仕様(本切羽)が主流であったため、袖を留めるボタンとして使われることもありましたが、現在ではほとんどが装飾のみの仕様(開き見せ)です。


昔の職人が遊び心で作った、高い仕立て技術をアピールするために施したという説もありますが、いずれにしろ、何らかの文化的な要因がボタンとしての実用性を離れたと考えられています。


キッスボタンの持つ意味

ボタンを重ねることで、通常通りに並べた時よりも、立体的な印象を与えることができます。


これにより、ジャケットの袖口にアクセントがつけられ、それまでになかった高貴な魅力が浮かび上がります。


また、キッスボタンは職人の高い技術を要します。


袖ボタンを数ミリという単位でキレイに重ねることは用意ではありません。

少しでも重なりがずれていると、全体的なバランスが崩れてしまいます。


オーダースーツならではの、とても手間のかかる作業です。


しかし、それだけの手間がかかる分、通常の袖ボタンよりも高級感がでます。


ブリティッシュスーツ、レギュラースーツなどと組み合わせることで、グッと高級感のある印象へと変化させることができます。


オーダースーツで、袖口にもこだわりたいという方にはおすすめです。


オーダースーツにおけるキッスボタン

先述のように、キッスボタンには様々なメリットがありますが、厚みのあるボタンを使用してボタンを重ねると、ボタン同士がキレイに整列しづらくなるため、結果的に見た目があまり良いものではなくなることが多々あります。

なんでもキッスボタンにすれば、見栄えが良くなるというわけではありません。


また、ボタンを重ねていることで、通常の袖ボタンよりも衝撃を受けることが多く、割れやすいというデメリットもあります。


そのため、キッスボタンでオーダーする際には、ボタン選びにも注意が必要です。


ボタンの素材

ボタンの材質の中で、最もおすすめなのが水牛です。

水牛ボタン

※出典 リッチボタン

素材や柄の良さには高級感があり、落ち着いた印象も持ちあわせています。


プラスチックやカゼインのボタンは、カジュアルなデザイン向けのボタンなので、ビジネス向けではありません。


その他にも、貝ボタン、ナットボタン、ポリエステルボタン、メタルボタン、革ボタンなど、ボタンには多くの種類があります。


高級感という面では、やはり水牛が最も好ましいですが、個性を出すために他の素材のボタンを選んでみるのも一つの手です。


ただし、ビジネスシーンにそぐわない雰囲気を出してしまわないように、慎重なボタン選びをするように注意しましょう。


ボタンの数

キッスボタンの数で、最も主流なのは4つです。

通常の袖ボタンであれば、4つだと長めに感じることが多いですが、キッスボタンであれば4つでも丁度よいバランスになります。


逆に、ボタンが3つの場合、小さくギュッと固まった印象を与えます。


ただし、体型が小柄な人に関しては、ボタンを3つにする方が全体的なバランスが良くなることがあるため、一概に4つが良いとも言い切れません。


中には、5個重ねボタンというのもあり、重ねボタンの数を多くして、よりお洒落な雰囲気を魅せるというアプローチもあります。

3つ重ね
※出典 Pitty Savile Row

キッスボタン

このように、キッスボタンのオーダーは意外に幅広く、スーツ全体のバランスと合わせて個性を出す必要のあるディテールです。


ちょっと個性を出したいという時には、キッスボタンにこだわってみると、スーツの奥深さを感じることができるかもしれません。


キッスボタンでスーツに高級感を

4つ重ね

スーツの面白いところは、キッスボタンのような細かいところで高級感を演出すると、ふとした場面で好印象を与えたりするところもするようなところです。


単純にオシャレという面もありますが、ビジネスシーンでもスーツの高級感というのは、良い印象に映りやすいものです。


ただし、中途半端なキッスボタンは逆効果ですので、しっかりとした高級感のある素材のボタンをオーダーすることも心がけましょう。

更に、生地の色柄との相性や季節感などを考慮して色を決めると、より一層雰囲気が良くなります。


是非、この機会にキッスボタンを取り入れてみてください。

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