本切羽とは
「本切羽(ほんせっぱ)」は、「本開き(ほんあき)」とも呼ばれ、ジャケットの袖口にあるボタンが、開閉できるようになっているものをいいます。
スーツの袖口のボタンは通常1~5つ程度ついており、4つボタンが一般的ですが、本切羽には奥の1~2つのボタンが開閉できないようになっているタイプもあります。
これは、親から子にスーツが受け継がれたときに、体型に合わせて、袖を長く直しやすくしたものだといわれています。
袖口にボタンがついているもので、開閉できないものがありますが、これは、「開き見せ(あきみせ)」と言います。
※出典
Pitty Savile Row
開き見せは、ボタンホールがあるように刺繍がしてあり、このデザインを「切羽(せっぱ)」と言います。
※出典
サラリーマンのファッションを考える
開き見せのボタンは直接縫いつけてあり、見た目にはボタンが留めてあるように見えますが、袖口が縫ってあるため、開閉はできません。
開き見せには、すべて縫ってあるタイプや、袖口2cm程度は開くようになっているタイプなどもあります。
本切羽の起源
袖にボタンがつくようになった始まりには、いろいろな説があります。
有名なところでは、ナポレオン率いるフランス軍の兵隊が、寒さから鼻水を袖で拭っていたのをナポレオンが嫌い、鼻水を拭わせないように袖にボタンをつけたという説。
ファッションの装飾として飾りボタンがつけられたのが始まりという説など様々です。
別名「ドクタースタイル」とも呼ばれ、医者が患者を治療するときに、袖が邪魔にならないように、まくりやすくしたのが本切羽の起源だとする説もあり多種多様です。
現代では、ビジネスシーンでも、ジャケットを脱いで、ワイシャツだけで仕事をすることも珍しくありませんが、本来ワイシャツは、下着とした扱われていたものです。
当時、人前でワイシャツになることは失礼なこととされていたため、本切羽に仕立てることで、ジャケットを脱がなくても動きやすくしたという逸話もあり、その起源は未だ明確になっていないとされています。
本切羽のメリット
本切羽は、ボタンを外してまくることができるため、トイレに行った時に手を洗ったり、袖口を汚したくない時にとても便利です。
暑い時にも、袖をまくって温度調節ができるので、春夏のジャケットにも適しているといえます。
ただ現代では、袖をまくる実用性よりも、おしゃれのひとつとして楽しめるのが本切羽の大きな魅力かもしれません。
スーツは細かなディティールに気を配ることで、人と違ったセンスをアピールすることができ、特にオーダースーツを作る時には、自分のこだわりによって仕立てることが可能です。
袖口のボタンを重ねボタンにして、さらに本切羽で仕立てるなど、自分なりのこだわりや遊び心を演出できます。
本切羽のデメリット
本切羽はボタンホールが開いているため、袖の長さが調節できないデメリットがあります。
本切羽でも、奥のボタンが開閉できないタイプであれば、袖を長く調節することができますが、袖口を詰めるのは難しくなっています。
本切羽のジャケットを袖口から詰めてしまうと、ボタン位置のバランスが悪くなるため、調節する場合は、アームホールから調節しなければいけません。
アームホールの調節は技術がいるため、費用がかかることもあります。
開き見せの場合は、袖口から調節ができるため、既製品のスーツは開き見せになっているものが多くあります。
ただし、オーダースーツであれば、自分の体に合わせてあるので、袖の長さを調節する必要がありません。
そのため、本切羽のスーツを着ることはオーダースーツを着ていることの証になるケースもあります。
本切羽を着こなす
本切羽の着こなし方に決まったルールはありませんが、参考になる着こなしを3つ紹介します。
1~2つボタンを外して少しだけラフな印象に
本切羽のボタンを1~2つ外しておくと、こなれた印象のあるスタイルができます。
これは、本切羽ならではの着こなし方で、固い印象になりがちなスーツスタイルにラフなイメージを与えてくれます。
少し肩の力を抜いて、スーツを着こなしたい時におすすめです。
また、開き見せでは袖口のボタンを開けることができないため、1つボタンを外しておくだけでも、周りに本切羽のジャケットだとアピールすることが出来ます。
袖口を軽くまくると、アクセントになり、時計やカフスなどもさりげなく目立たせることができます。
腕を出してスッキリとロールアップに
※出典
SUIT SELECT
カジュアルにジャケットを着こなす時には、ボタンをすべて外して、腕までまくり上げたロールアップスタイルがおすすめです。
ビジネスシーンには向いていない着こなしですが、麻や綿などの春夏用のテーラードジャケットを使った【ジャケパンスタイル】で着こなすと、スッキリとしたおしゃれな印象を与えます。
シャツを着ている時には、シャツの袖も一緒にまくりましょう。
中途半端にシャツだけ見えていると、だらしない印象を与えてしまいます。
5分袖や7分袖など、ロールアップの長さによってイメージは変わるので、スーツスタイルに合わせてアレンジしましょう。
あえてボタンは外さない
本切羽の着こなしでは、あえてボタンを外さない着こなしもおすすめです。
ボタンを外さなくても、スーツに詳しい人なら、一目見れば本切羽であることがわかります。
ボタンを外した着こなしは、人によってはアピールしすぎに感じることもあるでしょう。
スーツはTPOに合わせて着こなすことが大切です。
主張しすぎない着こなしをするのも、ひとつのおしゃれだといえます。
本切羽の着崩し方が浮いてしまうような場所では、きっちりと着こなすことで良い印象を与えることができるでしょう。
本切羽を自分らしく着こなそう
本切羽は、スーツの袖口が開くことで動きやすくした仕様ですが、ファッションとして、どう着こなすかも大きな魅力のひとつです。
袖口を本切羽にするだけで、今までのスーツの着こなしから、ワンランク上のこだわりを持った着こなし方を演出できます。
ボタンを外してカジュアルダウンしたり、あえて外さずにさりげなく着こなしたりと、さまざまなパターンを試してみてください。