【アームホール(Arm hole)】とは、名称の通り、腕を通す穴のことで、スーツジャケットの身頃と袖の付け根部分をいいます。

「身頃」とは、襟・袖などを除いた、からだの前と後ろを覆う部分の総称です。

アームホールは、別称【袖ぐり】とも呼ばれ、サイズ表などでは、【AH】と略されて表記されることもあります。

前身頃側を【前アームホール】、後身頃側を【後アームホール】といい、腕の付け根の周囲を採寸し、肩幅や胸回り、半胴などのサイズとのバランスをみながら、大きさや形を決めていきます。

アームホールは大きさや形によって、スーツの着心地が変わるため、見た目だけでなく、機能性にも違いが出る重要なポイントです。

アームホールの大きさの変化


アームホール
スーツは時代によってトレンドとなるスーツスタイルが変わり、スーツスタイルに合わせて、アームホールの大きさも変化しています。
ひと昔前のバブル時代には、幅の広いゆったりとしたシルエットのスーツが流行していました。

アームホールも大きく、袖も太くなっていたのが特徴的です。

現代では、【クラシック回帰】がスーツのトレンドになっていることから、正統派の【ブリティッシュスタイル】が人気を集めています。

スーツは、もともとイギリスから始まり、アメリカやイタリアなどに広がったことで、さまざまなスタイルが確立されました。

スーツの基本スタイルともいえるブリティッシュスタイルは、ウエストの絞り込みや、胸を強調するシルエットが、男らしく威厳のある印象を与えてくれます。

肩幅はタイトになり、アームホールも小さいことから、肩から袖にかけて細くなっています。

ブリティッシュスタイルは、タイトでスマートな印象を与えるだけでなく、誠実で清潔感のある着こなしができます。

そのため、第一印象が大事なビジネスマンには、最適なスーツスタイルといえるでしょう。

アームホールを小さくするメリット


アームホールの下の部分は、【カマ底】といい、カマ底を上げることを【カマ浅】、カマ底を下げることを【カマ深】といいます。

アームホール
※出典
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これによってアームホールの大きさが変わり、動きやすさやシルエットも変化します。

スーツの機能性を考えた時に、アームホールの大きい方が、動きやすそうだと感じる方もいるでしょう。

しかし、アームホールが大きい場合では、腕を下ろしている状態だと腕の締め付けがなく楽に感じますが、腕を上げた時に突っ張ってしまい、腕を動かしにくくなります。

前身頃も一緒に上がってしまうため、スーツ全体のシルエットも崩れてしまい、見た目としてもあまり良いものとは言えません。

逆に、アームホールを小さくすると、前身頃が上がりにくくなるので、シルエットも崩れずに、スムーズに腕を上げることができます。

仕事中は腕を下げているよりも、動かしていることの方が多いものです。
アクティブに動くビジネスシーンで、ストレスなく動くためにも、腕の動かしやすさは非常に重要です。

通勤で電車やバスを利用している人は、アームホールを小さくすることで、つり革を掴む時にも楽に感じるでしょう。

また、アームホールを小さくすることで腕が細く見えて、スーツ全体のシルエットも引き締まって見えます。

脇から胴の距離も長くなりますから、よりスタイル良く見せることもできます。

アームホールが大きいと、シワが寄りやすくなりますが、小さくすることでシワも寄りにくくなり、腕を動かすたびにシルエットが崩れる心配もありません。

着心地の良いスーツは、仕事にも集中することができますし、長時間着ていても疲れを感じにくくなります。

見た目だけではなく、体のことを考えても、アームホールを小さくするメリットは大きいのです。

理想的なアームホール


アームホール

スーツの着こなしで大切なのはサイズ感です。
体型に合ってないスーツは、見た目も悪く、着心地も悪くなってしまいます。

体型を隠したいからと大きなサイズを選んでしまうと、体が大きく見えてしまいますし、タイトすぎるスーツだと、窮屈に感じてしまいます。

自分の体にしっかりとジャストフィットしたスーツを着ることで、着心地よくスタイリッシュな着こなしになります。

スーツは肩で着るといわれるほど、肩周りのシルエットは重要ポイントとされています。

肩から袖までのシルエットを綺麗にするには、アームホールを小さく、肩の位置に合っているものにするのが理想的です。

しかし、肩の形や腕の肉付き、筋肉のつき方は人それぞれ違うものです。
既製品のスーツはどんな人でも着られるように、アームホールは少し大きく作られているのが一般的です。

アームホールが、本当に自分の体に合っているかを確かめるには、まっすぐ立って鏡を見るだけではわかりません。

前ボタンを閉めた状態で、腕を横に広げたり上にあげてみて、動きやすさや前身頃の突っ張り具合をチェックする必要があります。

また、同じスーツを着ていても、職種によっては相性の合わない分野も出てきます。

デスクワークでは、前に腕を突き出すことが多くあるでしょうし、接客が主の方は、体を捻ったり、腕を横に広げたりすることが多いかもしれません。

普段の動きを想定しながら動かしてみると、実際の仕事でどれだけ機能的なのかイメージしやすくなります。

もしも動きにくさを感じたら、アームホールが腕の形に合っていないのかもしれません。

自分の職種や環境に合った、理想的なアームホールをオーダーすることが大切です。

アームホールにこだわってワンランク上の着こなしを


アームホール

スーツを選ぶ時には、スーツのカラーや、トレンドのスーツスタイルデザインだけにこだわりがちですが、ひとつひとつのパーツにこだわることで、ワンランク上の着こなしができるようになります。

アームホールも、たった少しのサイズや位置の違いで、見た目や印象を変えることができる大事なポイントです。

着心地の良い、機能性も伴ったオーダースーツをつくれば、これまで日々の勤務で感じていた肩や体全体の負担が緩和されるかもしれません。

そういった意味でも、アームホールにこだわる意義は非常に大きいのです。

見た目の良さだけではなく、メリットをしっかりと理解して、あなたの仕事に最適なアームホールのスーツをつくってみてはいかがでしょうか。