1.大失敗をする前に正しい知識を身につけましょう!




「会社に着ていくブラックスーツは喪服としても使うことができますか?」
「喪服はたまにしか着ないのに価格が高すぎるので、ビジネス用のブラックスーツを喪服としても使って良いのなら、そうしたほうが無駄がないのでは?」

若い人ならこんな疑問を持つことがあるかもしれません。
しかし、上司にそんな質問をするのは避けておいたほうが無難です。

下手したらお父さんや親戚のお年寄りの場合でもNG。

「そんなことも知らないのか!」と、ため息をつかれたり、大目玉を食らってしまうかもしれません。

というのは、ブラックスーツと喪服には、細かいけれど明確な違いが存在するからです。

知らない立場から見れば「同じような黒いスーツでしょ?」と思えても、違いをちゃんと知っている人にとっては、すぐに分かる重要な違いとなります。

喪服を着るお通夜や葬儀告別式というのは、厳粛で、やり直しのきかない特別な機会。

葬祭の場での失礼や失敗は、社会人としての常識を疑われるもととなり、ビジネスにおいての評価やその後の人間関係にまで悪影響を及ぼしかねません。

知らなかったばかりに大恥をかいてしまう前に、正しい知識を身につけておきましょう。

2.「ブラックスーツ」という言葉のニュアンスの違いとは?




「ブラックスーツ」とは、もともとはメンズの礼服のことを意味していました。

ちなみに礼服とは冠婚葬祭の時に着用するフォーマルな装いのことで、喪服は葬祭時に着る礼服ということになります。

いまでも「ブラックスーツは冠婚葬祭の時にだけ着る特別なもので、高級素材の黒いスーツ」というイメージが一般的であり、特に年配者のほとんどは、それが常識と考えています。

しかし、最近では就職活動やビジネスシーンに黒いスーツを着る人が増えたため、服飾用語として混乱を招いています。

「ブラックスーツ」と一言で言っても、人によって、また世代によって、イメージする服が違うという事態になっています。

TPOに合った服とみなすかどうかの解釈にも、世代によって、人によって、ギャップがあります。

まずは、「ブラックスーツ」と「喪服」の定義を頭に入れてください。

現在は「ブラックスーツ=礼服(喪服)」という意味で使っている人のほうが多いです。

今後の数十年のうちに常識が変化していくこともあるかもしれません。
しかし、当面の間は年長者の感覚に合わせるのが、社会生活上での失敗を避けられるでしょう。

わかりやすくお伝えするため、このコラムでは、黒い礼服・喪服のことは「礼服・喪服」と呼び、ビジネスに着用する黒いスーツのことを「ブラックスーツ」と呼ぶことにします。

3.ブラックスーツと喪服の3つの違い




ブラックスーツと喪服は同じように見えるかもしれませんが、実は細かい部分でかなりの違いがあり、その違いを知っている人が見れば一目瞭然です。

まず、ブラックスーツと喪服では、比べて見るとわかりますが、色がかなり異なります。

ブラックスーツは少しグレーの入った黒であるのに対し、喪服は「墨黒」「漆黒」と呼ばれる濃い黒です。

また、ブラックスーツの場合は光沢のあるものもありますが、喪服に光沢があることは絶対にありません。
布の素材も異なります。

ブラックスーツは、ビジネスシーンでの耐久性を高めるため、また価格をリーズナブルに抑えるため、ウールとポリエステルの混紡の布地が使われているものが一般的です。

それに対して喪服(礼服)は、ウール100%の高級素材の布を使用して仕立てられています。

ブラックスーツと喪服では形にも違いがあります。ビジネスで頻繁に着用するブラックスーツは体型に合わせたスリムなデザインであるのに対し、冠婚葬祭という特別な機会にのみ着用する喪服(礼服)は体型が変化しても着られるように、ゆとりを持たせたデザインになっています。

4.喪服のルールは立場によっても異なる




喪服には正喪服、準喪服、略喪服の3種類があり、どの喪服を着るべきかは、立場によって異なります。

正喪服はモーニングコートで、上着とベストが黒で、ズボンは黒とグレーの細いストライプになっているもの。

一般的に「喪服」と呼ばれているブラックスーツは準喪服ですが、現在では一般的な喪服という扱いになっています。

略喪服とは、濃紺や濃いグレーの無地または細いストライプのスーツで、ただしネクタイ・靴・靴下は黒にするのがマナーです。

自分が遺族・親族の場合、通夜においては準喪服か略喪服、葬儀告別式においては正喪服または準喪服の着用が正式とされています。

最近の傾向では、通夜・葬儀告別式ともに準喪服でも良いとされています。

一般の弔問客の場合は、正式には通夜・葬儀告別式には準喪服または略喪服を着用することになっていますが、

最近の傾向では通夜・葬儀告別式は準喪服を着用する人が多いです。

つまり、ビジネス用ブラックスーツを喪服として使えるのは、「略喪服」で良い場合、すなわち、自分が一般の弔問客である場合です。

しかし、どんなブラックスーツでも良いわけではありません。

いままで述べてきた喪服の特徴になるべく近いもの、そして、次に述べる喪服のルールに違反しないものである必要が出てきます。

5.喪服のルールに違反しないブラックスーツとは?




まず、色味を吟味する必要があります。なるべく無地に見える濃い黒、光沢がないものを選んで下さい。
安っぽく見えると失礼にあたるので、ウール100%またはウールが多く使われている布地のものがベターです。

形については、スリムでおしゃれなデザインのものよりも、スタンダードなもののほうが場違い感がありません。

喪服には、スーツ以外に身に着けるものにも細かいルールがあるので、気をつけてください。

ワイシャツは白で、カフスボタンを付ける場合はパールか光沢のない素材の黒石のみOKです。

ベストを着る場合は上着と共布の黒が正式とされています。靴は光沢のない素材で金具の付いていないもの、靴下は黒。
ネクタイは黒でネクタイピンは付けない決まりです。

上記を守っておけば、ビジネス用ブラックスーツでも、お通夜や葬儀告別式に参列することが可能です。

しかし、あくまで略喪服であり、現在では略喪服を着るべき場合でも準喪服(一般的な喪服)を着る人が多いため、周囲から浮いてしまったり目立ってしまったりする場合があります。

特に、光沢のある素材や明るめの黒のスーツの場合、明るい場所に出ると、喪服との違いがはっきりと見えてしまいます。

会場内では気付かれなくても、出棺で明るいロビーや戸外に出た時などに目立ちますので、十分に気をつけてください。

レンタルするという方法も検討しましょう。

喪服のルールを知った今、ブラックスーツを喪服として着まわすことの難しさがおわかりになったかと思います。絶対に不可能ではありませんが、日頃から喪服の準備をしておくのが、できる社会人かもしれません。