これまで、セミオーダーでスーツを仕立てていく行程を順序立てて追ってきたが、全ての仕立て方や寸法を決めることで依頼はついに完了する。

筆者もようやく出来上がりを待つだけの状態までたどり着くことができた。

通常は、依頼日から1カ月~1カ月半ほどで完成するという。

やっと全行程が終わった喜びもあるが、自分だけのスーツができるとあって、到着が待ち遠しい。



今回のオーダーでは、

(1)仕事で使える
(2)プライベートでも使える
(3)モテる

という3点を意識したスーツを仕立てた。

この3つを意識しながらテーラーと会話していくと、われわれの年代でのスーツの買い方について一つの答えが導き出された。
それは、「若作りしない」ということだ。

30~40代にとって、「若作り」は無意識のうちに発生してしまうものだろう。
20代でさまざまなジャンルのファッションを試し、一方向に落ち着いたころには30代。

そこから年齢を経るごとに、洋服自体を購入する頻度が激減し、昔買った服を着回す時代に突入する。
そして、すでに年代とファッションとのギャップが生まれ始めているのに、まだ自分は若いつもりでいる、いや若くありたい気持ちが強い。

それこそオシャレが好きだった人ほど顕著になる傾向があるだろうし、ある意味、悲劇といっても過言ではない。
そしてこれはスーツの着こなしにも言えることなのだ。



一昔前から、若い世代が着るスーツのパンツが異常に細くなった。
これはスーツ全体のシルエットがタイトになった中での一傾向ではあるのだが、ちょうど今の30代が20代のころに流行したとものだっただろう。

筆者もそうだが、仕事はもちろん、結婚式などのパーティーでは、それはそれは細いパンツと先の尖った革靴を履いたものだ。



だが、これはあくまでも若いということが美しく着こなす要素の一つに入っていた。
体形を維持し、いまだに当時のスーツを着ることができる人もいるだろうが、それによって見る側が感じる印象は、「若さ」ではなく「若い格好」。

悪いわけではないが、良くもない。まずもってモテはしないだろう。
寄る年波という言葉を使うには抵抗があるが、それを前向きに捉えて年相応の着こなしを心掛けることが重要なのだ。

着こなしという点でいえば、スーツ以外の部分にも視野を広げてほしい。
今回はオーダースーツを作ることをゴールとしたが、スーツを着るのであればシャツやネクタイ、靴なども必要になってくる。

オシャレ難民にとって、この組み合わせを考えることもかなりハードルが高いことなのだが、今回協力してもらったテーラーから大人のスーツの着こなしについて一つアドバイスをもらった。

まずはチーフを胸ポケットに入れてみること。
シャツの素材や柄を考えるより、またネクタイの色や組み合わせに悩むより、一層勇気のいる行為かもしれないが、一度やってしまえば、逆にないと落ち着かないくらいしっくりくるものらしい。



シャツやネクタイがありきたりのものであっても、胸ポケットから覗く一枚のチーフによって、自分らしさと年齢をちょうど着地させてくれる着こなしが実現できるという。

たった一枚のチーフで見え方・見せ方を大きく変化させるスーツの着こなし。

これまで、スーツ、シャツ、ネクタイなどをバラバラに買い揃えてきたならば、これからは買い方を変えた方がいい。自分に合った一着を仕立ててから、それに合うものを一つ一つ集めていくべきだ。

そして、自分の年齢も、今一度確認してみるということをお薦めする。