30~40代にもなると、いいスーツを一着くらいは持っておきたくなるだろう。何よりもスーツは女性ウケがいい。女性が好む男性ファッションとして、スーツは昔からその筆頭に君臨し続けてきた。
昔に比べて、男性ファッションのジャンルが広がりをみせているにもかかわらず、女性は圧倒的にスーツ姿の男が好きなのだ。
邪な気持ちの有無はさておき、「いいスーツを買う」と決心したとき、どうせならばオーダーメイドで自分だけのスーツを手に入れたいと思ったことがある人も少なくないはず。筆者もある時に考えたことがある。
しかし、「高い」「頼み方が分からない」「面倒」といったイメージで結局、購入しやすい既製品に手を伸ばしてしまった。
そんな中、実は最近、オーダースーツが気軽にかつ安価に作れるようになっているそうだ。
「オーダースーツって、数十万するんじゃないの?」という不安を抱きながら、実情を確認するために、東京・日本橋にあるテーラー「blue. tailoring room.(ブルー.テーラリングルーム)」を訪れた。
迎えてくれたのは、代表の山田宗輝さん。大手テーラーショップから独立し、オーダーメイドスーツ専門店を経営している。
一般的にオーダーメイドは、大きく分けて「フルオーダー」「イージーオーダー」「パターンオーダー」がある。
簡単な違いとしては、フルオーダーはハンドメイド、イージーオーダーはマシンメイド(ミシン)、パターンオーダーは既製服のアレンジだ。
イージーオーダーは、マシンメイドとはいえ職人が手掛けており、ほとんどのパーツや生地などを選ぶことができるので、かなりのこだわりを持っていたとしても、十分満足いく仕上がりになるそう。同店はこのイージーオーダー(※同店ではセミオーダーと言う)をメインに扱っている。
挨拶もそこそこに、「オーダースーツはいくらくらいで作れるのか?」と素直に疑問をぶつけてみた。「生地のセレクトやオプションによっても価格は変わりますが、約4万円から作ることができます」と山田さん。
なんと、4万円!
大手紳士服店にある既製品でもそれくらいの価格だ。出費が同じなら、自分の体に合わせて作るオーダースーツの方が断然良いではないか。
いやいや、まだ安心はできない。それは、イメージ通りのオーダーメイドなのだろうか。これは、実際に頼んで確認するほか術がない。そこで、試しに一着作ってみることにした。
オーダーメイド。スーツに限らず、なかなか頼む機会はない。ゆえに、オーダーする際に何を伝えればいいのか検討がつかない。安直に思い描いたのは「自分の好み」。
早速、色は明るい方がいい、柄はある方がいいなどと伝えてみたが、山田さんいわく、まだその段階ではないそうだ。
最初に考えておくべきことは、「予算」「自分の状況(所持しているスーツ)」「用途」の3つ。
この3つをテーラーに伝えることさえできれば、あとはYESかNOだけでも自分が求めるスーツは完成するという。
予算によって生地を変え、自分の状況によって持っているものとの重複を避け、用途によって形状や丈などを調整する。
これを自ら考えて依頼することは不可能に近い。これらを明確に伝えることで、テーラーは膨大な組み合わせの中から、依頼者が求める一着に必要なピースを絞り込んでいくのだ。
これこそプロフェッショナルの仕事。
好みは後回しにして、「4万円」「グレー・水色・黒の3着を所持」「仕事とプライベートで併用できるもの」という条件を提示。ついでに、「モテるスーツ」と加えた。
完成品から選ぶということから脱却し、求めるものを自ら作るというオーダーメイドスーツの世界。果たしてどのような一着ができるのか期待に胸が膨らむ。